大阪高等裁判所 平成9年(ネ)2307号 判決 1998年1月30日
呼称
控訴人(一審被告)
氏名又は名称
河淳株式会社
住所又は居所
東京都中央区日本橋浜町二丁目三〇番一号
代理人弁護士
上村正二
代理人弁護士
石葉泰久
代理人弁護士
石川秀樹
代理人弁護士
田中愼一郎
代理人弁護士
松村武
呼称
被控訴人(一審原告)
氏名又は名称
大和産業株式会社
住所又は居所
大阪府東大阪市本庄西一丁目六二番地
代理人弁護士
阪口徳雄
代理人弁護士
谷口達吉
輔佐人弁理士
藤本昇
主文
一 原判決主文第三項中、被控訴人に金三四七万七八〇〇円及びこれに対する平成七年五月三〇日から支払い済みまで年五分の割合による金員を越えて支払いを命じた部分を取り消し、この部分の被控訴人の請求を棄却する。
二 控訴人のその余の本件控訴を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審を通じ、これを三分し、その一を被控訴人の、その余を控訴人各負担とする。
事実及び理由
第一 当事者の求めた裁判
控訴人は、「一 原判決主文第三項を取り消けす。二 右取消しにかかる被控訴人の請求を棄却する。三 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は、「一 本件控訴を棄却する。二 控訴費用は控訴人の負担とする。」との判決を求めた。
以下、控訴人(一審被告)を「被告」といい、被控訴人(一審原告)を「原告」という。その他の略称は、原判決のそれによる。
第二 事案の概要
一 本件は、原告が、被告製造、販売にかかる手さげかご(被告製品)の意匠(被告意匠)が本件登録意匠に類低しており、被告製品の製造、販売行為は本件意匠権を侵害するものであると主張して、意匠法三七条一項に基づき被告製品の製造販売の停止を、同条二項に基づき被告製品及びその半製品の廃棄並びに被告製品の製造に必要な金型の除却を各求めるとともに、民法七〇九条、意匠法三九条一項に基づき損害賠償を求めた事案であるが、当審における審理の対象は、右損害賠償請求のうち原判決が、主文第三項で認容した部分である。
二 前提となる事実関係(原告の権利、被告の行為)、原告の請求及び争点は、原判決四頁一行目から八頁七行目までに記載されているとおりである。
第三 争点に関する当事者の主張
原判決八頁九行目から五七頁四行目までに記載されているとおりである。
但し、三九頁末行の「実開昭五八―三一二一四号公報」を「実開昭五八―四一三一四号公報」と、四四頁八行目の「設けられいる」を「設けられている」と各改める。
第四 当裁判所の判断
一 争点1(被告意匠は本件登録意匠に類似しているか)について
次のとおり付加、訂正するほかは、原判決五七頁七行目から一一一頁二行目までに示されているとおりである。
【原判決の訂正等】
1 六五頁九行目から一〇行目にかけての「太陽ビルメン製品A」の次に「(乙第一九号証の1ないし6)」を加える。
2 七五頁二行目冒頭から八行目末尾までを「実開昭五七ー九八二二五号公報(乙第二七号証)記載の意匠は、かご本体の正面板及び背面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、上中下各段の孔群は合わせて全体で略逆台形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、上中下各段の左右端においては、かご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、また、かご本体の左右側面板に、縦長長方形の孔が、縦三段に、上段及び中段の孔群は合わせて全体で略逆台形状を呈するよう、下段の孔群は全体で長方形状を呈するよう穿設され、かつ、該孔の縦列はすべて垂直で、上段及び中段の左右端においては、かご本体の両側端縁に沿ってカットされて三角形状に形成され、両側端縁との間に孔一個分ほどの幅の無孔部を有しており、」と改める。
3 七八頁一〇行目の「乙第一二号証の1ないし6」を「乙第一二号証の1ないし5」と改める。
4 八〇頁二行目から三行目及び六行目から七行目にかけての「縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・七段分」(二箇所)を「縦が最上段の小孔の残り約三分の二段分」と、八行目の「乙第一二号証の一ないし6」を「乙第一二号証の1ないし5」と各改める。
5 八一頁八行目から九行目にかけての「縦が最上段の小孔の残りと二段目の約一・五段分」を「縦が最上段の小孔の残り約〇・五段分」と改める。
6 八四頁四行目及び八五頁末行から八六頁一行目にかけての「乙第一六号証の一ないし6」(二箇所)を「乙第一六号証の1ないし6」と各改める。
7 一一〇頁二行目の「したがって」から一一一頁二行目末尾までを次のとおりに改める。
「 そうだとすれば、被告製品を製造、販売することは本件意匠権を侵害するものである。但し、被告自らが被告製品を製造していることを認めるに足りる証拠はなく、後記二のとおり、被告は、南部化成株式会社が製造した被告製品を同社から仕入れて販売しているものであって、同社との間に被告自らが製造しているのと同視しうるような関係にあることを認めるに足りる証拠もない。
したがって、被告には、被告製品の販売により原告が被った損害を賠償する義務がある。」
二 争点2(被告が原告に対して損害賠償義務を負う場合、賠償すべき損害の額)について
甲第八号証、第一三、第一四号証、乙第三二号証の1・2、第三三、第三四号証、第三五号証の1ないし17、第三六号証によれば、被告は、平成五年一〇月から平成七年二月までの間に、南部化成株式会社が製造した被告製品を、同社から一個当たり三一〇円(消費税抜き)で合計七万〇〇五〇個(仕入総額二一七一万五五〇〇円)仕入れて、株式会社セブンーイレブン・ジャパンに対して一個当たり三六〇円(消費税抜き)で合計六万九五五六個(販売総額二五〇四万〇一六〇円)販売したことが認められる。
したがって、被告は、被告製品を六万九五五六個販売することにより、販売総額二五〇四万〇二八〇円から仕入額二一五六万二三六〇円(三一〇円×六万九五五六個)を控除した三四七万七八〇〇円のの利益を得たものと認められ、意匠法三九条一項により、右額は原告が被った損害の額と推定される。
してみれば、原告の本訴請求のうち損害賠償請求は、右三四七万七八〇〇円及びこれに対する平成七年五月三〇日(訴状送達の日の翌日)から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり、その余については理由がないこととなる。
三 結論
以上の次第で、これと一部結論を異にする原判決主文第三項中、原告に金三四七万七八〇〇円及びこれに対する平成七年五月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を越えて支払いを命じた部分を取り消して、この部分の原告の請求を棄却し、被告のその余の本件控訴を棄却することとし、訴訟費用はは本判決主文第三項のとおりの負担として、同主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林茂雄 裁判官 小原卓雄 裁判官 長井浩一)